日本・世界の自転車と街
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様々な分野で活躍するサイクリストが語ります。

2021年5月19日

「働く!自転車部品」必ずしも油圧式ディスクブレーキだけではない。機械式の良さも知ってほしい!

近年、MTBだけでなくロードバイクやスポーツタイプの電動アシスト自転車(E-bike)にも急速に普及が進むディスクブレーキ。その誕生は1971年。日本の自転車コンポーネントメーカー“シマノ”によって、子供向けのジュニアスポーツ自転車(いわゆるスーパーカー自転車)向けとして登場しました。この機構はオートバイのブレーキシステムの見た目を模倣しただけでなく、雨天時でもよく止まる本格的なシステムとして注目されました。

しかしその後、いくつかのメーカーが散発的にディスクブレーキ商品を発表しましたが、重量が増えてしまうなどのデメリットが克服されずに普及には至りませんでした。本格的に普及が始まったのは90年代のサスペンション付きMTBブームからとなります。

電動アシスト自転車にはユニットやモーターなどがつくことで重量が増すため、欧州では制動力の高いディスクブレーキ装着モデルが増えている

MTBからクロスバイク、そしてロードバイクへと搭載が進むディスクブレーキ

オフロードで路面とのトラクションを維持し、振動吸収性能を大きく向上させるサスペンションは、同時にバイク全体の重量が増えてしまうデメリットも生み出します。重量が増えることでブレーキゴムの摩擦による従来のブレーキシステムでは十分な制動力を得られないことがあるため、より高い制動力を持つディスクブレーキの需要が一気に高まりました。この時代には自転車メーカー以外にも、オートバイメーカーや小規模なパーツメーカーの参入が同時期に集中したことで様々な商品が開発されました。

ディスクローターの取り付け方法は主に2種類。左が6穴タイプ、右がセンターロック
Photo : Norio IMAIZUMI/Workshop Monkey 

しかし、取り付け方法を事前に協議することなくスタートした開発競争は、フレームメーカー、サスペンションメーカー、ブレーキメーカーによる苛烈なシェア争いへとつながり、互換性を持たない部品同士を取り付けるための変換パーツも膨大に増えていく結果を生み出しました。さらに、同一メーカー内でも使用するブレーキオイルの違いやホース品質が異なるものが混在し、一般サイクリストだけでなくプロショップにとっても混乱の時代だったのです。

しばらくしてブームの終焉とともに開発競争も沈静化し、取り付け規格の統合も進んで行きました。その後MTBだけでなく、雨天時での自転車通勤での使用も想定されるクロスバイクなどにも採用。さらに、ここ数年はロードバイクにもディスクブレーキ化の波が押し寄せています。

近年ロードバイクはフレーム素材の進化に加え、ホイールやタイヤの性能向上によって、前世代モデルと比べて軽量で振動吸収性が高く、高速走行性能を高めたモデルが多くリリースされています。この速く走るというポテンシャルを高めることは同時に、制動力をより高めることとなり、ロードバイクへのディスクブレーキ搭載といった現在の流れになっています。

ディスクローターに伴いハブの形状も異なる。左が6穴タイプ、右がセンターロック
Photo : Norio IMAIZUMI/Workshop Monkey

セルフメンテナンス性の高さと輪行しやすさが機械式ディスクブレーキの魅力

ディスクブレーキには、ブレーキホース内のオイルに圧力をかけてブレーキパッドを動かす「油圧式」と、従来のキャリパーブレーキと同様に金属性のケーブルを引くことでパッドを動かす「機械式」の2タイプがあります。握力の強さに関係なくスムーズな制動力を得られる点では、機械式よりも油圧式が優れています。

今後ディスクブレーキは油圧式を中心に開発が進んでいくことは間違いありません。一方で機械式にもまだまだ捨てがたいメリットがあります。何と言っても機械式はブレーキ機構がシンプルなので、一般サイクリストでも日常のメンテナンスが容易です。また、輪行袋に入れてスポーツバイクを運ぶことも比較的気軽に行うことができます。

油圧式を搭載したスポーツバイクも輪行できますが、エアがブレーキ機構内に入ることを防ぐためにレバーが動かないようにするなど、機械式に比べると気をつけるべき点が多いのです。

また機械式は油圧式に比べ金額を抑えることができ、初めてディスクブレーキ搭載ロードバイク購入を考えている人にオススメです。最近では機械式ディスクブレーキを搭載した入門モデルをラインナップしているメーカーも増えてきています。

さらに長距離ツーリングやグラベルライダーの間では好んで高性能な機械式を選ぶ人もいます。これはレースほど速度域が高いわけではないため、制動力の高さだけでなくセルフメンテナンス性とのバランスを考え、さらに分解修理の容易性が評価された結果です。

レースなどで高速走行を求める人には油圧式をオススメしますが、のんびりサイクリングや自転車旅に使用する場合は、機械式のディスクブレーキやキャリパーブレーキが適している場合もあります。まずはプロショップで予算とともに自分の使用目的を伝えてから選ぶようにしましょう。

また機械式ディスクブレーキの性能を最高の状態で発揮するには、スムーズなケーブルラインの取り回しとブレーキインナーケーブルの摺動抵抗を下げることが重要になります。インナーケーブル表面が平滑に仕上げられたものを選択、低抵抗のケミカルの使用などを検討しましょう。また、リアブレーキケーブルは、ブレーキキャリパー付近で水や泥が侵入しやすいことが多く、とくにインナーケーブルの出口となる部分を、定期的にメンテナンスすることをおすすめしています。

筆者プロフィール

錦織大祐/フォーチュンバイク代表

東京・亀戸にあるスポーツバイク専門店「フォーチュンバイク」(東京都江東区亀戸4-46-16ハイツA 1階)代表。オリンピックを目指すロード・トラック選手やホビーレーサーなど幅広いレベルのライダーから絶大な信頼を受ける高い技術力と、自身が体験した数多くの自転車旅やロードレース出場で培った分かりやすいアドバイスは秀逸。ユーロバイクや台北ショーなどにも足を運び、最新情報にも精通する。