日本・世界の自転車と街
旅や仕事・日常生活を通して、日本そして世界の自転車にまつわるトピックスを、
様々な分野で活躍するサイクリストが語ります。

2021年1月22日

MTBは四季を感じる最高のツール。ファットバイクで走り抜ける冬の酒田

私が住む山形県酒田の山は11月中旬から5月下旬ごろまで雪に閉ざされる。休日にMTBで山道を走り抜けることが好きなのだが、夏に使っているタイヤでは雪道を走って峠まで到達するのは難しいので、このシーズンは走らずにいた。

しかし、休日に山道を走ることは私にとって最高のリフレッシュ。「どうにかしてオールシーズン走りたい」と考えて、ホイール径が大きい29インチMTBの購入を検討したのだが・・・いろいろ調べてみると、29インチMTBでも雪が深いと走ることが困難で、オールシーズン走ることは難しいらしい。

「やはりMTBでは無理なのか・・・」

そう諦めかけていた時、アメリカやカナダでファットバイクと呼ばれる極太タイヤMTBに乗って雪道を走っている写真をSNSで見かけた。「これなら冬も走れる!」とすぐに購入することを決めた。

MTBに乗り始めた頃は「太いタイヤがカッコいい」と思っていたが、シルクロードやオーストラリア大陸横断などの長期海外自転車旅でも実際にはオンロードを走る機会の方が多く、抵抗を少なくするために細めのタイヤを選ぶようになっていた。

しかしSNSでファットバイクを実際に乗っている人たちの感想を見てみると、「オンロードをスムーズに走る」という価値観とは違った、まだ味わったことのない快感がそこにあるように思えてきた。何よりもMTBに乗り始めた頃に抱いた太いタイヤへの憧れが蘇ってきたのだ。

装備買い替えにあれこれ悩むのも楽しい! 走り出す前から旅は始まっているのだ。

26インチ・ファットバイクのフレームはオーダーで作ってもらうことにした。フロントのエンド幅は150mmだから手元の26インチバイクのリアよりも幅が広い。リアにいたってはエンド197mmだ。タイヤは徹底的に「太さ」にこだわり、なんと4.8インチのSurly Bud & Louを選択。いつも乗っているバイクのタイヤが2.2インチだから倍以上になる。

雪道を走ることを前提に、空気圧をなるべく落とすためにホイールはチューブレス対応を選んだ(チューブが入っていないため低圧で走行してもパンクリスクが少ない)。サスペンションなしのフレームにタイヤの空気圧も適正空気圧の最も低い値にしても、ファットバイクでは十分にタイヤのエアクッション性を感じる。これなら冬の山道でも走ることができそうだ。

ウエアも寒さに対応するために新調し、グローブやゴーグルなども買い揃えた。シューズはまだ買い換えていないが、どんなモノがいいのだろうか・・・なんて、悩むのも楽しい。次の休日には、このバイクで新しい旅の始まりだ!

雪道で出会う新しい景色と自然の厳しさに感動。冬を楽しむための夏のライドも待ちきれない!

待ちに待った晴れた休日、新調したファットバイクに乗り12月の山へ。そこには想像もしてなかった別世界が広がっていた!

白一色ではない。枯れた木々の黒と白の二色でもない。一言で白銀と言っても、様々な白が重なり合って景色を織り成す。雪面の上を動物の足跡が点々と続く。雪に覆われた路面は凸凹がなく、確かにタイヤに感じる抵抗は強いが不快ではない。所々に薄い氷が張っていて、それを割りながら走るのがまた楽しい。「スノーライドにハマってしまいそうだな」と直感した。

夏に草木が生い茂って全く前に進めなかったところに冬はきれいな道が現れる。この景色は実にロマンティックだ。しかし雪が20センチ以上積もれば、いくらファットバイクでも走るのは苦行でしかない。吹雪いている時は危ないから天気の良い時だけ走るようにしているが、途中で好天を待っているとその間に積雪が増えて結局走れなくなってしまう場合もある。ファットバイクで冬の自然に分け入ったからこそ、その厳しさを肌で感じることができる。

少し温かくなって春になっても注意が必要だ。春先でもまだまだ雪が多く、しかも地面に近い付近だけ溶けて空洞ができていたり、日当たりのいい斜面では積もった雪が崩れ落ちやすくなっていたりと、意外と冬より春の方が注意して走る必要がある。

雪道は厳しく何が起きるか分からないので、初めて走るルートは行かないようにしている。次の冬に備えて雪がない時期に新しいルートを開拓しにいこう。

「オールシーズン走れるようになって・・・休日も忙しい、忙しい」

次のライドを考えただけでつい頬が緩んでしまう。何歳になっても少年だ。

筆者プロフィール

小林和人/精神科医、医療法人山容会理事⻑

東京大学医学部医学科卒業(2000年)の精神科専門医。日本スポーツ精神医学会所属。趣味は自転車旅行で、2004〜 2005年にシルクロートド1万km単独横断、2007〜2008年に オーストラリア6,500km横断を経験。現在も勤務地である山形県酒田市でMTBライドを趣味として楽しんでいる。